広島高等裁判所 昭和57年(ネ)28号 判決 1982年9月14日
控訴人(被告)
永岡和夫
ほか一名
被控訴人(原告)
遠藤博子
ほか二名
主文
原判決を左のとおり変更する。
控訴人らは各自、被控訴人遠藤博子に対し金六〇万二五八四円と内金五二万七五八四円に対する昭和五五年八月三日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を、被控訴人遠藤由夏、同遠藤純代に対し各金一〇万〇四三〇円と内金八万七九三〇円に対する昭和五五年八月三日から右各支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
被控訴人らのその余の請求を棄却する。
訴訟費用は第一、二審を通じてこれを一〇分し、その九を被控訴人らの、その余を控訴人らの各負担とする。
この判決は被控訴人らの勝訴部分に限り仮に執行することができる。
事実
控訴人らは、「原判決中、控訴人ら敗訴部分を取消す。被控訴人らの請求をいずれも棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人らは、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人らの負担とする。」との判決を求めた。
当事者双方の主張及び証拠の関係は、控訴人らが乙第三八号証の一、二、第三九、四〇号証を提出し、被控訴人らにおいて乙第三八号証の二の成立並びに乙第三八号証の一、第三九、四〇号証の各原本の存在及び成立を認めると述べたほか、左の点を付加訂正する以外は原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
原判決三枚目裏五行目の「不注意にも」から同六行目「過失により」までの全部を「左方から道路左側(東側)の路側帯を走行近接中の礼亮の動静に対して自動車運転手として当然払うべき注意を払わないまま加害車を漫然左折進行させた過失により、同車の左側直近の路上に転倒した同人を看過して」と改め、同末行の「(一)葬儀費」と四枚目表一、二行目を全部削除し、同三行目から五枚目表五行目までの番号「(二)、(三)、(四)、(五)」を「(一)、(二)、(三)、(四)」と順次繰り上げ、四枚目表四行目、五行目、七行目、八行目、同裏一行目、五枚目表二行目、九行目、一〇行目の「原告ら」を「始及び被控訴人博子」と改め、五枚目表六行目の「原告始は、金七二一万九七一二円を、」を「始及び」と改め、七行目の「金六五五万七八一二円」の前に「それぞれ」を加え、同一二行目を削除して「(五)本訴請求」を付加し、五枚目裏一行目から七行目までを削除して「右始は本訴提起後の昭和五六年七月一八日死亡し、その賠償請求権を同人の妻である被控訴人博子が二分の一、始の子である被控訴人由夏及び同純代が各四分の一宛相続により承継取得した。よつて、被控訴人博子は合計金一〇一三万六七一八円と内金九八三万六七一八円に対する本件事故の翌日である昭和五五年八月三日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の、被控訴人由夏、同純代両名はそれぞれ金一六八万九四五三円と内金一六三万九四五三円に対する前同日から各支払済みまで前同割合による遅延損害金の各支払いを求める。」と挿入し、五枚目裏一一、一二行目を削除して「加害車の運転者である控訴人永岡は市道からこれと交差する国道二号線へ左折進入して南進するに当り、右交差点の直前で一旦停止し、該国道の左方(南方)の東側にある路側帯を約三四メートル南方から北進して近接中の礼亮の自転車を認めたが、彼我の距離関係から先に左折できると判断して発進した。折から前記路側帯を礼亮と同様自転車に乗つて加害車の方に向つて北進中の訴外田場芳秀がその約一六メートル前方に加害車が左折の合図をして左折態勢に入つているのを認め、更に約六メートル余り進んだ(北進)ところで加害車の」と挿入し、六枚目表五行目の「発生」の前に「本件事故が」を加え、裏一行目「(四)の事実」を「(三)の事実全部及び(五)の事実のうち始の死亡と相続関係の点」と改める。
理由
一 本件事故の発生、控訴人らの帰責事由、及び双方の過失についての原判決理由一ないし四(原判決七枚目裏一行目から一一枚目表二行目まで)は、次の点を付加訂正するほか、当裁判所の認定及び判断と同一であるから、これをここに引用する。
1 原判決八枚目表八行目の「手前」を「直前」に改め、同行の「左右」から同裏三行目まで全部を「先ず、左方を見たところ、国道下り(東側)車線の路側帯を南方から中学生か高校生位の少年と思われる者(弁論の全趣旨からして礼亮と認められる。)の自転車が加害車に向つて北進中であつたが、割合距離があるように認められ、次いで国道上り車線(北行き)の交通状況を見てから国道下り車線(南行き)上を南進する自動車の状態を見たが、左折を妨げる状況にはないことが認められた。」と改め、同八行目の「時速」の次に「約一〇キロメートルないし」を加え、同四行目の「4」、同末行の「5」、九枚目表五行目の「6」を順次「3」、「4」、「5」と改め、同九枚目表一行目の「いたところ、」の後に「同人の友人で後続走行していた」を、同二行目の「運転の自転車」の次に「(二六インチ型車高〇・九二メートルのドロツプハンドル式一二段変速ギア付スポーツ用)」を、同行「訴外田場」の前に「五段ギアに入れた状態で」を挿入し、同三行目「訴外礼亮」から「飛び出し、」までを「両名とも右自転車もろともその数メートル前方へ転倒し、礼亮はその上半身部分を路側帯から車道上へ突き出して」と改め、同一〇行目「第三七号証」の次に「、第四〇号証」を挿入する。
2 同九枚目裏一行目の「被告永岡は、」の次に「左折に当り加害車に向つて直進近接する訴外礼亮の自転車を認めたのであるから、加害車の運転席から左側の真横が約六メートル死角になることを考慮するとき、」を、同七行目の「過失により」の次に「礼亮運転の自転車が意外に接近していたのに気づかず、同自転車が田場の自転車に追突して転倒したのを看過する結果となり、」を加える。
3 同一一枚目表一、二行目の「八割五分」を「六割五分」に改める。
二 そこで、損害の点について判断する。
(一) 逸失利益及び慰藉料
本件事故に基づく損害のうち、始と被控訴人博子の慰藉料及び礼亮の逸失利益に関する当裁判所の認定判断も原判決理由五の2及び3と同一である(但し、「原告ら」「各原告」とあるのを「始及び被控訴人博子」と、「原告始」とあるのを「亡始」と改める。)から、これを引用する。
(二) 過失相殺
本件事故と相当因果関係のある損害は、遠藤始、被控訴人博子両名につき各金一五四一万八〇三六円となるところ、前記割合により過失相殺をなす結果、右両名の損害額は各金一〇〇二万一七二三円となる。
(三) 損害のてん補
右両名の損害につき、各金九六七万円のてん補がなされていることは当事者間に争いがないから、これを控除すると、その残額は各金三五万一七二三円となる。
(四) 弁護士費用
被控訴本人遠藤博子尋問の結果と弁論の全趣旨によれば、始及び被控訴人博子は本件訴訟追行のため弁護士を代理人に選任し、その費用として各金二〇万円の出損を余儀なくされたことが認められるところ、本件事案の内容、訴訟の経過、損害認容額等を考慮すると、右弁護士費用のうち各金五万円を本件事故による損害として認めるのが相当である。
(五) 相続
遠藤始が昭和五六年七月一八日死亡し、その妻である被控訴人博子、その子である被控訴人由夏、同純代がそれぞれ法定相続分に応じて始の権利を承継したことは当事者間に争いがない。
されば、被控訴人らの取得した損害賠償請求権の金額は、被控訴人博子において金六〇万二五八四円、同由夏、同純代において各金一〇万〇四三〇円となることが明らかである。
してみれば、被控訴人らの本件請求は、控訴人ら各自に対し、右各金員と被控訴人博子につき金五二万七五八四円(弁護士費用分七万五〇〇〇円を除いたもの)に対する昭和五五年八月三日(本件事故発生の翌日)から、同由夏、同純代につき各金八万七九三〇円(弁護士費用分一万二五〇〇円を除いたもの)に対する前同日から各支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で正当として認容し、その余を失当として棄却すべきものである。
三 よつて、これと異る原判決を右のとおり変更することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 福間佐昭 梶本俊明 中村行雄)